世界の5大ウイスキー産地の歴史を振り返る。日本は、真の5大ウイスキーになれたのか?

ウイスキー

ウイスキーはアイルランドが発祥とも言われ、その後スコットランドに渡って発展、19世紀にブレンデッドウイスキーが登場したことにより急速に世界に広まっていきます。

そして現在、大西洋、太平洋を越えて各国で作られるようになっていますが、中でも特に生産が盛んで歴史が長く、銘柄の数、質の優れた産地は5つあり、それぞれスコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、日本があてはまります。(世界の5大ウイスキー)

もちろんそれらの国々の中だけでも非常に幅広い銘柄が存在している以上、一つにまとめるのはちょっと乱暴かもしれません。

しかしながらあきらかな傾向、おおまかな特徴はありますので、それらを理解するとさらにウイスキーの世界が見えてくるのです。

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産地1 スコットランド

スコットランドはイギリスの北部、面積にして北海道程度のエリアですが、この地で生まれるウイスキー、いわゆる「スコッチ」は世界中のウイスキーファンを長年虜にしています。

世界全体のウイスキー生産量に占める割合は6〜7割、そのうえ生産された9割以上は輸出されるなど、イギリス製品の中でも極めて重要な品目とされています。

さらにはスコットランドの中でも産地ごと、蒸留所ごとに非常に個性の違いがあるのも特徴で、さすがにスコッチとすべてひとくくりにするのは難しいです。

ウイスキーの世界の扉を開く時、必ず経験するのがスコッチですので、ここでは簡単に代表的な6つのエリアごとの特徴を押さえてみましょう。

ハイランド

ハイランドはスコットランドの約3分の2の面積を占める北部地域で、イギリス内でも最大の面積を誇る地方行政区画となります。

険しい山々で構成された丘陵地帯が多いですが、もちろん平野、海岸もあり、ウイスキーの蒸留所は各地に点在、それぞれの風土を取り込んだ味わい、風味となっています。

つまりハイランド内だけでも地域ごとに違いが顕著、ということになるのですが、一般に北部は麦芽を焙煎する時に使うピートのフレバーが強く、南部は反対にピート香の弱いマイルドな特徴があります。さらにはスペイサイドに近い東部は華やか、西部は蒸留所によって個性の違いが良く表れています。

スペイサイド

地理的にはハイランドの東部に面したエリアで、明確な行政区域として存在しているわけではありませんが、基本的にはスペイ川流域を指します。

山岳や渓谷が多くて冷涼、大麦の生産が盛ん、スペイ川の水質などといった諸条件がすべてウイスキー作りに適切で、現在スコットランドに残っている蒸留所の約半数がこの地域に集中しています。

味わい、風味の傾向としては華やかでフルーティー、中にはハチミツのような香りの銘柄まで存在しています。

ローランド

ハイランドの「ハイ」に対してローランドはその名の通りスコットランドの下部地域で、具体的には東の港町ダンディーと西のグリーノックを結んだ線より南側を指します。

かつては非常にウイスキー作りが盛んでしたが、歴史的諸要因で今現在はかつての勢いはありません。

しかしながら基本的に2回蒸留にとどめるスコッチがほとんどの中、ローランドでは3回蒸留を選ぶ蒸留所もあったりと、他には見られない特徴があり、結果的にライトで飲みやすい銘柄が多い傾向となっています。

アイラ

スコットランドの西側の海岸のさらに向こう、ヘブリディーズ諸島の中の最南端に位置する淡路島程度の大きさの島がアイラです。

こちらでは現在8つの蒸留所が操業しており、そのいずれもが極めて個性の強い存在として世界中、そして日本でも多くの方に知られています。

特徴としては麦芽を焙煎する際に使用する燃料、ピートが豊富に産出する土地ですのでピート香が強烈、いわゆるスモーキーフレバーがとても強いです。

また海に面した蒸留所がほとんどですので熟成させることで磯の香り、ヨード香などが備わるというユニークな一面もあります。

とにかく他エリアとは一線を画す存在ですので、好き嫌いがはっきりと別れる銘柄が多いと言えるでしょう。

アイランズ

スコットランドには大小様々な島が点在、その各地に蒸留所は立地していますが、それらをまとめてアイランズモルトと呼称しています。

しかしながら極めて個性的なアイラ島産のフレバーに近しい銘柄、スペイサイドの華やかさにも通じる銘柄など多種多様で、やはりこちらもひとくくりにする事は難しいです。

2000年代以降に新たに蒸留所が建設されたり、今後の発展に期待できるエリアでもあります。

キャンベルタウン

ハイランドの西部、キンタイア半島にあるのがキャンベルタウンで、今では3つの蒸留所しか残っていませんが、かつては多くの蒸留所が操業していました。

NHK朝の連続テレビ小説「マッサン」のモデルにしてニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝氏が20世紀初頭に留学した地でもあります。

歴史的経緯にて凋落してしまったとはいえ、現存する蒸留所は在りし日の栄光、伝統の火を消さないように懸命にウイスキー作りに励んでいます。

ほのかに感じるピート香、そしてフルーティーな中にも塩気の感じる製品が有名です。

産地2 アイルランド

アイルランド共和国、そしてイギリス領ですが北アイルランドにて作られるウイスキーはアイリッシュウイスキーとなります。

かつては世界に流通するウイスキーの約6割のシェアを誇っていましたが、アメリカの禁酒法やイングランドとの独立紛争などの影響でそのシェアは激減していまいました。

伝統的に大麦以外に様々な穀物を原料に選び、ピートを使いません。またシングルポットスチルにて3回蒸留で仕上げる場合、特に雑味のないクリアなテイスト、そしてオイリーなフレバーになります。
近年は様々なアプローチにて伝統にとらわれない製品もリリースされています。

産地3 アメリカ

アメリカは17世紀にスコットランド、アイルランド人が入植して以降にウイスキー作りの歴史が始まります。

当初は糖蜜、ライなどを原料に使用していましたが、やがてはアメリカで栽培しやすい穀物であるとうもろこしを使用、ピッツバーグを中心に栄えることになります。

その後アメリカ政府が税制を敷くとそれを快く思わないウイスキー業者たちは合衆国に属していないケンタッキー、テネシーに移動、現在までアメリカンウイスキー、とりわけバーボンの中心地となっています。

近年はアメリカ全土に小規模な蒸留所、「クラフトディスティラリー」が生まれており、クラフトビールを生み出すクラフトブルワリー同様にこだわり抜いたバーボン、ユニークで斬新なアメリカンウイスキーを意欲的にリリースしています。

産地4 カナダ

カナダでは18世紀中盤以降、イギリス領になったことによりイギリス人が移住、自家消費するためにウイスキー作りが始まったとされます。

またアメリカで禁酒法が敷かれると密輸用のウイスキー作りが盛んになり、皮肉ですが大いに発展、ちなみに現在もアメリカが主要な輸出先となっています。

ライを原材料の主体としたフレーバリングウイスキー、とうもろこしを主体としたベースウイスキーをブレンドするのがカナディアンウイスキーの特徴で、5大ウイスキーの中でも最もライトでマイルド、軽快な風味となっています。

そういったこともありカクテルベースとしても人気です。

産地5 日本

ピュアで繊細、複雑で芳醇な香り、極めてエレガント…近年海外で高い評価を得ている日本のウイスキーには、惜しみない称賛の言葉が集まっています。

かつてはスコッチの亜種とバカにされていた事を考えると信じられない話と言えるでしょう。
ちなみに傾向としては日本人の好み、食文化をも反映して食事に合わせやすいようなもの、ピートの香りの抑えたものが多い特徴が一応あると言えます。

ただし国際的な評価の高い銘柄というのはシングルモルトであれブレンデッドであれ、限定品で高価格帯のものに限られており、戦後の日本人の生活にウイスキーを根付かせたような銘柄、某角瓶や某ヒゲのおじさんの銘柄などが評価されているとは…言えません。

国内で特に売れている製品、つまりトップシェアのものが無反応、それに対してマニアや富裕層に向けた高級品、限定品が評価されるというのは、日本のビールと似ている現象かも…。

私たちがスコットランドのシングルモルトを楽しむ時に彼の地の気候や風土、郷土料理に思いをめぐらせ、またアメリカやカナダのウイスキーを飲むことで禁酒法、さらには北米の独立運動をも連想することは、それほど珍しいことではありません。

たとえば一本数万円もする日本のシングルモルトを外国の方が飲んでサントリー創業者、ニッカウヰスキー創業者の人生、戦後のトリスバー等に思いがめぐることは、正直ほとんどないでしょう。

理由は、やはりそれらが同一の文脈にあるようでいて、あると断言できるほど密接につながってはいないからです。

私たち自身も振り返る必要があります。日本には世界に誇れるウイスキー文化が果たして定着しているのか、と。

日本はスコットランドよりも広い国土に豊富な水と大自然、そして四季の移ろいを持つ素晴らしい国です。

潜在的に今以上のウイスキー大国になる可能性が大いにありますし、外国の方が日本のウイスキーを飲むと日本のウイスキーの歴史を知りたくなるような状況が実現できると、真に5大ウイスキーの仲間入りを果たせるのだと思います。